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平頂山事件訴訟東京地裁判決要旨

1 判決言渡日時

平成14年6月28日午前11時

2 東京地方裁判所民事10部

裁判体 菊地 洋一(裁判長)
    藤原 俊二
    田中 正哉

3 事件名

平成8年(ワ)第15770号損害賠償請求事件

4 原告

莫徳勝ほか2名
被告 国

5、主文

(1)原告らの請求をいずれも棄却する
(2)訴訟費用は原告らの負担とする

6 事案の概要

中華人民共和国国籍を有する原告らは、旧日本軍が1932年(昭和7)年9月16日に撫順市近郊の平頂山で住民を一斉に殺害した際に家族を殺害され自らも 受傷したことにより著しい身体的・精神的苦痛を受けたと主張し、また、被告国が救済措置のための立法を長年行わなかったことは違法であると主張して、被告 国に対し、それぞれ慰謝料2000万円を請求した。
原告らが主張する請求権の根拠は、次のとおりであり、その請求権の存否が本件の焦点である。

  1. 1907年のヘーグ陸戦条約3条
  2. 法令(注)11条1項に基づき準拠法となる中国民法
  3. 日本の民法
  4. 立法不作為につき国会賠償法1条1項

法令は、渉外的な司法関係についてどの国の法律が適用されるかを定めた法律である。

7 判決理由の骨子

(1)国際法に基づく請求について

ヘーグ陸戦条約3条は、その用語、趣旨・目的、国家実行例から見ても、条約の作成過程を考慮しても、個人が国家に対し損害賠償請求権を有することを定めたものと解釈することはできない。

(2)中国民法に基づく請求について

国の違法な公権力の行使を原因とする損害賠償責任(国家賠償責任)の問題は、対等当事者間の純然たる司法関係(不法行為)とは法的性格が異なること、両者 は法的取り扱いを異にしていること、我が国の法律に基づいて行われるべき我が国の公権力の行使の適否が他国の法律で判断されるということは法制上予定され ていない不合理な事態であることから考えて、法令の対象にはならず、直接我が国の法律が適用される。
本件は、旧日本軍の中国における戦争行為・作戦活動に付随する違法な行為を原因とする損害賠償請求であり、この行為は我が国の公権力の行使に当たる事実上 の行為である。したがって、本件に法令の適用はなく、我が国の法律が適用されるから、中国民法に基づく請求は理由がない。

(3)日本法に基づく請求について

民法は対等当事者間の法律関係を対象とするものであるから国の公権力の行使を原因とする損害賠償責任の問題には適用されず、本件に適用される当時の日本法 においては、国家賠償法に相当する法律も存在していなかった。このように、当時は、公権力の行使を原因とする国の損害賠償責任の法律上の根拠がなかったか ら、被告は損害賠償責任を負わないと解するほかない。

(4)立法不作為を原因とする国会賠償請求について

国会の立法不作為は、それが憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて立法をせずに放置したというの用意に想定し難い例外的な場合でな い限り、国家賠償法1条1項の適用上、違法と評価されることはない(最高裁昭和60年11月21日判決・民集39巻7号1512頁)。
憲法の各規定をみても、戦争費会社に対する国の損害賠償に関する立法をする義務を一義的に定めていると解することはできないから、本件立法不作為を違法と評価することはできない。

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