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強制連行山形訴訟控訴審・弁護団声明

弁護団声明

中国人強制連行・強制労働山形訴訟弁護団
団長 弁護士 加藤 實

1 本日,仙台高等裁判所は,中国人強制連行・強制労働山形訴訟事件において,国と企業である酒田海陸運送株式会社に対する損害賠償請求事件につき判決を言い渡した。

本判決は,原審山形地裁判決と同様,中国人強制連行・強制労働事件に対して,加害と被害の事実を明確に認定し,その違法性を厳しく指摘した上で,国及び企業の共同不法行為責任を認定した。しかし他方,原告らの請求権は日中共同声明5項によって裁判上訴求する権能を失ったとする2007年4月27日の西松建設最高裁判決を踏襲して,請求を棄却するという不当判決を言い渡した。西松建設事件最高裁判決が示した当事者の努力による解決を求める旨の付言に基づき,先般,一部の被害者について和解が成立した。このような真撃な和解解決が進展する状況に関わらず,仙台高裁が司法の役割を放棄する不当判決をなしたことは到底許し難く,私たちは直ちに最高裁に上告する決意である。

2 本件では,国は,一貫して,原告らが主張した過酷な強制連行,強制労働の事実に対して全く認否もせず,ただ法的責任を争うという不誠実な対応に終始した。

また,被告企業である酒田海陸運送は,過酷な労働の実態を争い「日本人と比較しでも過酷に労働で、はなかった。被告会社もまた戦争被害者である」等の主張を原審同様に繰り返し,強制労働もなかったと主張してきた。この点について,仙台高裁が,原告檀蔭春の証人尋問を実施し,かつ,本判決においても,法廷に出された多くの連行被害者の証拠を基に,再度被告らの反論をことごとく否定して,国と企業の共同の強制連行・強制労働の事実を全面的に認定したことは評価する。加えて,本判決においては「本件被害者らは強制労働等により極めて大きな精神的・肉体的苦痛を被ったことが明らかになったというべきであるが,その被害者らに対して任意の被害救済が図られることが望ましく,これに向けた関係者の真撃な努力が強く期待されるところである」との付言をなしているが,この点もまた評価できるところである。

中国人強制連行強制労働の国と企業の共同加害行為の事実あるいは共同不法行為の事実は,本判決によっても厳しく指摘され,司法の判断は今や揺るぎないものである。強制連行・強制労働の事実は,慰安婦問題とともに,ILO条約勧告適用専門家委員会で幾度も勧告されるなど,国際社会においても公知の事実であり,もはやこれを争うことはできないものとなった。

3 私たちは,既に2006年3月,この全面解決を目指す「中国人強制労働補償基金」の提言を発表し,2007年4月の西松建設事件最高裁判決後も,この「補償基金」の設立を求め続けている。先般の西松建設との和解も踏まえ,更に国の責任を明確にし,酒田港に連行された338名を含む約4万人の中国人被害者の全体的な解決を目指すものであり,既に中国の各界からも基本的な賛同を得られている。戦後既に64年余が経ち,多くの被害者が既にこの世を去り,生存者も残り少なくなっている中で,未だに事実を認めず,謝罪もせず,解決をいたずらに引き延ばすことは,被害者の反感と憎しみを高め, 日中間の歴史認識の溝を深めるだけであり,絶対に避けなければならない。

残された原告らは,既に80歳を超えている。まさに被害者の命のあるうちに,被害の救済と人権の回復を図ることは,固と企業の道義的,政治的な責任である。

国と酒田海陸運送株式会社は,最高裁判決及び本判決において示された付言に誠実に従い,強制連行・強制労働の事実,その共同不法行為責任を真撃に受け止め,中国人強制連行・強制労働の事実を認めて,被害者に対して謝罪し,その解決のための今こそ勇気ある決断を行うべきである。

以上

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