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求釈明の申立書全文

事務局(1996/7/15)
これは1996年7月15日東京地方裁判所民事第一四部に提出されたものです。

平成八年(ワ)第五四三五号
原告  劉連仁
被告  国

求釈明の申立書
右当事者間の中国人強制連行・強制労働損害賠償請求事件について、原告は被告に対し左記の釈明を求める。

平成八年七月一五日
右原告訴訟代理人
弁護士  尾山 宏
弁護士  高橋 融
弁護士  小野寺 利孝

東京地方裁判所民事第一四部 御中

(求釈明を求める事項)

  1. 被告は、請求原因事実に対し何らの認否もしていないので、具体約な認否を求める。
  2. 仮に認否を拒否するのであれば、その理由を具体的に出されたい。

(求釈明を求める理由)


理由の第一は、事実認定と法的評価は表裏一体のもので分離することができないからである。

法解釈をするにつれ認定を要する事実が出てきたり、事実の把握が異なるにつれ新たな法規の発見・解釈が行われるというように、両者は密接不可分な関係にある。事実認定は、法の発見・解釈と結びついている。

とりわけ、本件では、原告は、強制労働させられていた炭鉱を逃げ出し、その後戦争が終わったことも知らぬまま一三年間も厳冬の北海道の山中を逃げ回るとい う文字どおり筆舌に尽くしがたい苦難を受けたのである。この原告の被った苦難の解明なくして行われる法の解釈は無意味であるし、本件の真の解決とはほど遠 い。

いわゆる外務省報告書には、原告を指す「劉連戸」の名が記載されており、原告が強制連行されたこと、北海道の明治鉱業株式会社昭和鉱業所で強制労働させら れたこと、一九四五年七月三○日、右鉱業所から逃走したことが全て記載されている。右外務省報告書は被告自ら作成したものである。被告は自ら作成した右報 告書に記載されている右事実についても認否を拒否するのであろうか。認否を明らかにすべきである。

また、原告が北海道の山中で発見された一九五八年二月ころの日本政府の総理大臣は強制連行が実行された当時の東条内閣の商工大臣であった岸信介であったこ と、同年三月四日参議院予算委員会で外務省アジア局長が強制連行について答弁していること、同年四月八日、愛知揆一内閣官房長官から原告宛に手紙が届けら れたことなども被告自らが関わったことである。被告は、右事実についても認否を拒否するのか。認否を明らかにすべきである。

カラマンドレーイはその著書「訴訟と民主主義」の中で次ぎのように述べている。

「法律家とは、あらゆる法律を暗記している全知の人である、と素人は思っている。…しかし、法律家とは、何よりも事件がどのようにして解決されなければな らないかを感じる者である。…この事件について定めている法律があるに違いない。あるいは、もし法律がないとしても、この趣旨に何らかの先例があるに違い ないと感じる。」(「訴訟と民主主義」八五頁、八六頁)

まさに、我々は、法律家としてこの事件がどのようにして解決されるべきかを感じ、そのため事実を解明することが求められているのである。


理由の第二は、相手方の認否は、訴訟活動の出発点だからである。

いうまでもないが、弁論主義のもとでは、裁判所は、相手方が自白した事実はそのまま判決の資料として採用し、相手方が争った事実は立証されなければならないとされている。

相手方の認否により争点が明確化されることにより、当事者は攻撃防御の対象が明らかになり、裁判所は訴訟活動の目標が明らかになり適切かつ効果的な訴訟指揮が初めて可能になるのである。


以上から明らかなように、請求原因事実の認否は訴訟活動の出発点であり、本件問題の解決の出発点である。被告は、請求原因事実の認否をすべきである。

仮に、あくまでも認否を拒むのであれば、その理由を明らかにすべきである。

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