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西松信濃川訴訟弁護団声明

和解についての声明

2010年4月26日

中国人強制連行・強制労働事件全国弁護団
弁護団長 高橋 融

本日,東京簡易裁判所において,中国人強制連行・強制労働事件のうち,西松組(現・西松建設株式会社)信濃川事業場に強制連行され,強制労働させられていた事件(以下「西松信濃川事件」)について,西松信濃川事件の被害者及びその遺族で組織される中国人強制連行被害者聯誼会西松建設信濃川分会(以下「信濃川分会」)の代表者5名と加害企業である西松建設株式会社(以下「西松建設」)との間で,和解が成立した。

■和解の概要
本和解は,和解当事者である信濃川分会の代表5名のみならず,西松信濃川事業場で苦役に従事させられた被害者全体についての解決を目的として,西松建設が加害の事実とその歴史的責任を認め,深く反省して謝罪し,その償いの証として被害者に支払われる1億2800万円の解決金を,中国の団体である中国人権発展基金会に信託するものである。

■加害の事実と責任を認めた明確な謝罪,その証としての解決金
強制連行・強制労働事件の被害者が最も強く望んで来たものは,何よりも,加害者が,加害の事実とその責任を認めた上で,明確な謝罪をすることである。

本和解で,西松建設は強制労働の事実とその歴史的責任を認め,深い反省に基づいて明確に謝罪した。そして,このような明確な謝罪を踏まえ,被害者に対する償いとして,解決金を信託することとしたのであり,金銭の支払いと責任・謝罪との関連も明確である。

これまで,日本政府や他の多くの加害企業が加害の事実さえ明確に認めず,一言の謝罪もしようとしないことを考えると,本和解において,加害者から事実の明確な確認と謝罪を得たことは,貴重な前進である。

■基金による解決方式
本和解は,和解の当事者のみならず,被害者全体についての解決を目指すものであり,その方式として基金の信託という形式をとっている。そして,中国国務院新聞弁公室主管の全国公益非政府組織である中国人権発展基金会が信託の受託者となり,責任を持ってその基金による和解の趣旨の実現を図ることとなる。信託によって形成される基金の運営には,被害者の代表者や日中の弁護士らが参加し,公正で透明な基金運営を図ることが計画されている。私たち弁護団は,中国人権発展基金会による基金の運営が,今後の同様な解決に当たって基金のモデルとなることを期待し,かつ,確信している。

■本和解の意義と決断及び課題
本和解は以上のように大きな意義を有するものである。これは,1995年以来,多くの中国人被害者,遺族と日中両国の心ある支援者,私たち弁護団が緊密に協力し,日本全国の裁判所における多数の訴訟を中心として,訴訟内外で展開してきた粘り強い闘いの成果である。

既に,事件から65年の歳月が経ち,強制連行・強制労働の生存被害者は日を追って少なくなっている。そのような状況において,本和解が,「事実と責任を認め,謝罪し,その証として償い金を支払う」という被害者の基本的要求を満たしていること,本和解の成立を望んでいる生存被害者がいることなどから,信濃川分会は,本和解が今後の望ましい全面解決への第一歩となるとともに,日中の平和友好をも進めるものであるという大局的見地に立ち,全会一致で本和解の受託を決断したものである。このような被害者の決断により,本和解は成立に至った。

他方,解決金はたとえ支払われても,これで被害者の受けた苦しみの全てが癒されることはありえないし,その金額も私たち弁護団が全面解決構想で提唱している,「国と企業の拠出による,被害者1人当たり2万米ドル以上の支払」からみても不十分なものである。また、和解条項の文言をめぐっては,中国内部でも様々な意見が出され,特に,最高裁判決が「法的責任を否定した」ことが和解の基礎にあるとの批判があった。私たち弁護団はこの点について西松建設と取り交わした確認書において,信濃川分会と私たち弁護団は,最高裁判決が法的責任を否定したと解釈していないことを明確にした。

このように本和解には,被害者が望む解決にはなお及ばない点もあるが,本和解がこれに参加していない共同加害者である国や他の加害企業の責任を免責するものでないことは言うまでもなく,私たちは,今後とも,国や他の加害企業に対し,責任を果たすよう求め,被害者の要求を可能な限り追求し、より前進した解決を求めて行く。

■今こそ全面解決を
本和解の成立は、加害企業が事実と責任を認めて謝罪し,その償いの証としての金銭支払いを決断すれば、それが一企業であってもその被害者の魂を安らかにし、信頼と友好を築き、日中における国家と国民の平和と友好の進展に重要な役割を果たしうることを示した。

同時に、本和解の意義は,西松信濃川事件にとどまるものではない。本和解により,中国人強制連行・強制労働事件は,全面解決への重要な足がかりとなる一歩をさらに踏み出したことになる。

私たち弁護団は,ドイツの「記憶・責任・未来」基金に学び,日本政府と企業がその責任を認めて謝罪し,その証として基金を設立する全面解決構想を提唱している。

外務省がかねて自ら作成した報告書で認め,さらにたくさんの裁判所が事実認定をした中国人強制連行・強制労働の被害者約4万人全てを対象とする全面解決が,今こそ政府主導で加害企業全ての参加を得て果たされるべきである。そしてまた,被害者が高齢化していることを思えば,一日も早く解決することが求められている。
私たち弁護団は,信濃川分会や他の多くの強制連行・強制労働被害者,その遺族と連帯して日中両国の内外で運動を展開し,様々な障害を乗り越えて全面解決を実現することをここに宣言する。

以上

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