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中国人強制連行・強制労働補償基金解説

はじめに

「中国人強制連行・強制労働補償基金」(以下「補償基金」といいます)は、補償基金設置の基本的な考え方を、ひとつの構想としてまとめたものです。

私たちは、この構想を実現するために、立法化その他の方法を想定しています。立法化するためにはさらに詳細な事項を定める必要があります。しかし、「補償 基金」構想の段階ですので、必要最低限の基本的な事項を定めるにとどまり、詳細な事項については定めていません。

この「補償基金」構想を一つのたたき台として意見を交換し、内容を練り上げ、完成させていきたいと考えています。

基金の目的

最初に、「補償基金」の目的を定めています。
中国人強制連行・強制労働問題の解決のためには、歴史的事実を直視し、責任を認め、真摯に謝罪し、その証として補償をし、二度と同じ過ちを繰り返さないた めに歴史的事実を後世に伝えることが必要です。本基金は、そのために、補償基金により強制連行・強制労働の被害者及びその遺族に対して補償金及び弔慰金を 支給し、未来基金により日中両国民の将来にわたる友好関係を築く事業を推進することを目的として設置されたことを明らかにしています。

基金の拠出主体

「補償基金」の拠出主体は、国、加害企業及びそれに関連する企業を想定しています。中国人強制連行・強制労働について責任を負うのは国と加害企業及びそれ に関連する企業です。したがって、「補償基金」の財源は、国、加害企業及びそれに関連する企業からの拠出金によります。

「補償基金」の財源に関して参考となるものとして、未解決となっている未払賃金及び加害企業への補償金があります。中国人強制連行・強制労働の被害者に対 する未払賃金は約8000万円(当時。現在に換算すると約800億円)、他方で国から加害企業に支払われた補償金は約5672万円(当時。現在に換算する と約600億円)です。国と加害企業及びそれに関連する企業は、少なくてもこれらも一つの基準として、拠出すべき金額(現在の換算金額)を定めるのが道理 であると思います。

機構

「補償基金」の運営のためには、基金運営全体を統括する機関と、具体的にたとえば被害者の認定や補償金等の支給作業を実施する機関が必要となります。そこで、前者に対応する機関として「管理委員会」を、後者に対応する機関として「運営委員会」を設置します。

「管理委員会」は基金運営全体を統括し、運営委員会の活動を監督します。構成員は、日本政府、中国政府、NGOから任命されます。運営委員会は、日本及び中国両国に設置され、被害者の認定、補償金等の支給、未来基金の事業などを実施します。

なお、以上は機構の骨格であり、詳細については今後具体化する必要があります。   

基金の内容

本基金は、

  1. 「被害者本人への謝罪の証としての補償金の支給」「遺族への弔慰金の支給」活動を行う「補償基金」
  2. 「中国人強制連行・強制労働の実態等を調査・研究・発表し後の世代に承継する事業」「中国両国民の相互交流・対話を通じて恒久平和を確立していくための事業」を行う「未来基金」

から成り立ちます。

「被害者本人への真摯な謝罪」として参考になるのは、ドイツの例です。ドイツでは、ドイツ連邦政府、アメリカ合衆国、被害者団体などで交渉が重ねられ、 1999年12月に基金設立が合意されます。当時、ドイツ連邦大統領ヨハネス・ラウ(SPD)は、合意当日、強制労働被害者に対して、「ドイツ国民の名に おいて赦しを請う」という演説を行いました。その後、さらなる交渉を経て2000年7月に「『記憶・責任・未来』基金の創設に関する法律」がドイツ連邦議 会で可決され、7月17日に調印されました。「被害者本人への真摯な謝罪」のあり方は、たとえば国会での謝罪決議など、さまざま有り得ると思います。その 際、被害者本人へ真摯に謝罪していることがきちんと伝わることが大切です。補償金等の支給は、後述するように、まさにその真摯な謝罪の証としてそれを象徴 するものといえるのであり、謝罪と補償金の支給が一体となってこそ「真摯な謝罪」の現れともいえるのです。

また、未来基金の活動としては、たとえば中国人強制連行・強制労働の実態調査しそれを記録に残すこと、基金主催で講演会を開催すること、基金として定期刊 行物を発行すること、日本と中国とで共同研究を進めることなどが考えられます。具体的な事業は、管理委員会等で決められることになります。

基金

  1. 補償金及び弔慰金は、被害者への真摯な謝罪の証として支給するものです。
    被害者が一番求めていることは、加害と被害の事実が認められ、真摯な謝罪が行われる中で人間の尊厳が回復されることです。その証として「補償金」を支給します。それは被害者らが求めていることにも合致します。
    なお、「補償基金」では、訴が繰り返されず終局的な解決であるという「法的安定性」をも十分に考慮する必要があります。「補償基金」により解決の道筋がつ いた場合には、現在行われている訴訟については、和解も含めて終結することを検討する必要があります。また、訴訟を提起していない被害者らに対しては、補 償基金による解決の可能性があります。それにより、法的安定性がはかられると考えています。なお、それでも訴訟を提起する被害者が出てくることが可能性と しては考えられます。しかし、加害と被害の事実を認め、真摯な謝罪をし、被害者の人間性が回復されることが文字通り行われたならば、被害者の多くは、訴訟 に比べて負担の少ない補償基金の補償による解決を求めると思われます。それにもかかわらずあえて訴訟を提起する被害者がでてくることは絶対にないとは断言 できませんが、その可能性は極めて低く、事実上法的安定性が確保されるのではないかと考えています。
  2. 支給額及び支給対象者
    補償金及び弔慰金の支給額は、「戦後補償関連の問題の解決のために日本政府が給付した金額」や「日本の財政事情」などを総合的に考慮して決めます。
    これまで戦後補償関連の問題の解決のために支給された例としては、台湾の軍人軍属に関する法律等が考えられます。一つの案としては、1人あたり2万米ドル(約200万円)との案もあります。
    また、中国人強制連行・強制労働の場合には、支給対象者が事業場報告書・外務省報告書等で特定されています(38,935人)。したがって、支給総額につ いては予算枠の設定が可能であり、数年の予算で順次支給することが想定されます。また、原資としては、前述した未払賃金及び企業への補償金を拠出させるこ とも考えられます。
    支給対象として「被害者本人への補償金」がありますが、すでに亡くなっている被害者に対しても生存被害者と同じように支給するのか、仮に支給するとしたら 同額支給するのかという検討課題があります。また、現在裁判を行っている原告らとの関係はどうするのか(新潟地方裁判所では賠償金として1人あたり800 万円が認められていますが、補償基金額が裁判の認容額よりも低い場合にどのように処理をするのか)ということも検討課題です。しかし、基本的に補償基金を 実現するとの方向性が定まれば、いずれも補償基金実現そのものを困難にするほどの問題ではなく、解決可能な課題であると思われます。

未来基金

未来基金の活動として、中国人強制連行・強制労働の実態調査・研究・発表があります。中国人強制連行・強制労働の被害者はいずれも高齢です。したがって、実態調査を行うにあたっても早期に事業を開始する必要があります。

さいごに

被害者はいずれも、現在なお人間としての尊厳が回復されないまま放置されています。被害者はいずれも高齢です。被害者らが生存中にこの問題を解決し、被害 者の人間としての尊厳を回復することがいま緊急に求められています。害者が生存しているときに解決しなければ、この課題は被害者らの子孫へ引き継がれるこ とになり、その解決はさらに困難になることが想定されます。

新潟判決により中国人強制連行・強制労働の全面的解決が現実的な政治課題として浮上し、かつ、被害者が生存しているいまこそ、この問題の終局的な解決をはかるチャンスといえます。

是非、「補償基金」を練り上げる議論を早期に始めて解決の道筋を明らかにしていただくことを強く望みます。

2004年5月

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