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宮崎判決が指し示したもの

「当裁判所の審理を通じて明らかになった本件強制連行・強制労働の事実自体は、永久に消え去るものではなく、祖国や家族らと遠く離れた異国宮崎の地で原告 らが当時心身に被った深刻な苦痛や悲しみ、この歴史的な事実の重みや悲惨さを決して忘れてはならないと考える。そして、当裁判所の認定した本件強制連行・ 強制労働の事実に鑑みると、道義的責任あるいは人道的な責任という観点から、この歴史的事実を真摯に受け止め、犠牲になった中国人労働者についての問題を 解決するように努力していくべきものであることを付言する」(下線筆者)

1 本年3月26日に言い渡された宮崎判決の結びの言葉である。裁判官の真心とある意味の無念さが伝わってくる。勝ちたかった。裁判官の思いが伝わるだけに、余計にその思いが強くなる。

しかし、この判決が指し示した解決の道筋は明快である。日本が国際社会で名誉ある地位を築こうとするのであれば(信用されたいのであれば)、自国の裁判所 でさえ指摘する「道義的責任」「人道的責任」を曖昧にできるはずがない。あまりに分かりやすい結論なのである。日本政府と企業は、単純明快な論理を突きつ けられたと言ってよい。

2 さて、付言に目を奪われがちだが、この付言を引き出したのは、何と言っても事実の重みであった。

本判決は、強制連行、強制労働の事実を正面から認め、「原告らの人格権(人間の尊厳)を著しく侵害するものとして、強度の違法性を有する」と断罪した。

また、被告三菱の反論に対しては、「(原告らの供述は)約60年以上前の出来事であるとはいえ、突然異境の地に連行され、過酷な労働を強いられたという、 比類のない強烈な体験について述べたものであって、その内容も実際に体験しなければ語り得ない具体性・迫真性に富んでいる」と最大限の評価をした上で、一 方、「(槇峰の事業場報告書が)中国人労働者に十分配慮し、むしろ終戦後は感謝されたなど、中国人労働者に対する厚遇を強調している点は、現実を隠蔽する ものと見られ、かえって信用性がないと言わざるをえない」と一刀両断に切り捨てた。

3 宮崎判決についてコメントを求められた被告三菱は、「当社の主張が概ね認められた」などと述べているが、ほんの一部、時効という法律上の主張によってかろうじて救われたに過ぎず、本論(違法行為の有無)のところでは完膚無きまでに弾劾されたのである。

裁判所は、「当裁判所の審理を通じて明らかになった本件強制連行・強制労働の事実に鑑みて」、判決の勝敗にかかわらず、何れにしろ解決しなければならない問題(いつかは解決しなければならない問題)であることを被告三菱に、そして日本政府に突きつけたのである。
(弁護士 西田 隆二)

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