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強制連行福岡訴訟第2陣福岡地裁判決要旨

判決理由要旨

第1 本件は、中華人民共和国の国民である原告らが、被告らに対し、
1 先の大戦中、原告らを日本に強制連行し、炭鉱で強制労働させた不法行為
2 1の強制労働をさせる際に安全配慮義務を履行しなかった債務不履行
3 戦後の原状回復義務違反の不法行為又は保護義務の債務不履行
4 戦後、犯罪行為を隠ぺいし、原告らの提訴を妨害した不法行為
に基づき、謝罪広告の掲載、慰謝料等の支払を求めた事案である。

第2 当裁判所の判断
1 強制連行・強制労働の不法行為
(1) 被告国は、国策としての中国人労働者移入政策に基づき、暴力等を用いて、原告らの意思に反し拘束して日本に強制連行し、また、原告らが強制労働に 従事した事業場の経営を支配し、原告らの監視に当たるなど、強制労働に加担したもので、その行為は不法行為に当たる。
(2) 被告会社らは、原告らがその意思に反して日本に輸送されるものであることを知り又は知り得る状況にありながら、中国において原告らの引渡を受けて その輸送の責任者となり、各鉱業所において直接支配して強制労働させたもので、その行為は不法行為に当たる。

2 国家無答責の法理
国家無答責の法理は、明治23年の行政裁判法、旧民法等の公布により実体法規範として確立していたところ、国家賠償法附則6項により同法施行(昭和22 年)前の公権力の行使には同法理が適用される。本件強制連行・強制労働は、国の中国人労働者移入政策によるものであるから、公権力の行使に当たる。よっ て、国家無答責の法理により、被告国は不法行為責任を負わない。

3 本件強制連行・強制労働の不法行為による損害賠償請求権についての民法724条後段の適用
(1) 同条後段は、法律関係確定の利益を重視し、請求権の存続期間を画一的に取り扱う除斥期間を定めたものである。
そして、行為時に損害が発生する本件強制連行・強制労働については、その起算点である「不法行為ノ時」は、加害行為終了時である。本件では、原告らが労 働に従事した各鉱業所の稼動は昭和20年8月末日までに停止しているから、これによって原告らに対する加害行為も終了したと認められ、遅くとも昭和40年 8月末日に除斥期間が経過し、原告らの被告会社らに対する不法行為による損害賠償請求権は消滅した。
(2) 除斥期間の効果制限は、権利消滅が時効停止等の実定法の規定の趣旨に反し、かつ、その状況が加害者に起因するため加害者の法的地位の安定を考慮し なくとも除斥期間の趣旨に反しないような特段の事情がある場合に限り認められる。本件では、そのような特段の事情は認められない。

4 強制労働についての安全配慮義務違反
(1) 被告国と原告らとの間には具体的な支配従属関係、指揮監督関係は成立しておらず、被告国は安全配慮義務を負わない。
(2) 違法状態にあり即時解放されるべき者に対する安全配慮義務を認めてその履行を求めることは、違法状態の継続を認めることになるから、そのような場 合、安全配慮義務の要件を欠く。被告会社らと原告らとの使用関係は不法行為に起因する違法状態であるから、被告会社らの安全配慮義務は認められない。

5 戦後の原状回復義務違反の不法行為又は保護義務の債務不履行
(1) 原告らが戦後の原状回復義務違反又は保護義務違反として賠償を求める損害は、本件強制連行・強制労働によりもたらされたものであって、これらの義務違反によって生じたものではない。
(2) 原告らが中国国内で受けたとする、戦時下敵国に労務提供した旨の非難は、中国国内における誤解によるものであって、被告らの行為との相当因果関係を欠く。
7 戦後今日まで犯罪行為を隠ぺいし、提訴を妨害してきた不法行為
被告国が、①中国人遺骨等の証拠資料を隠匿し、②外務省報告書等を隠匿、焼却し、③国会答弁等で強制連行、強制労働の事実を否定したことがいかなる法的義務違反になるのか不明である上、これらは原告ら各個人に対する不法行為とはならない。
また、ILO29号条約25条による被告国の義務は締約国に対する国際法上の義務であり、被告会社らの刑事制裁措置を執らなかったことが原告らに対する不法行為となるものではない。

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