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劉連仁事件東京地裁判決弁護団声明

  1. 本日、東京地方裁判所民事第14部は、中国人強制連行・強制労働被害者劉連仁事件につき、請求額2000万円の全額の認容をする画期的な判決を下した。
  2. この事件は、1944年9月、中国山東省において、農民であった劉連仁氏(当時31歳)を、日本軍の指揮下にあった傀儡軍が何らの理由もなく拉致・監禁の 上日本軍に引き渡し、これを受け取った日本軍が、日本政府指揮下にあった青島(チンタオ)の強制収容所に入れ、政府と企業はこれを日本に強制連行し、政府 の指揮下にあった北海道の明治鉱業の炭坑において強制労働させたが、この過酷な状況に耐えかねた劉氏が、この炭坑を脱出し、13年後の1958年に、北海 道山中で発見されたが、この間政府は全く救出のための行動をとらなかったという事案である。
  3. 劉連仁氏と同様に、日本に強制連行のうえ奴隷労働をさせられた中国人被害者は、外務省の調べによっても38,935名に上り、1945年8月の戦争終了までの間に、内17.5%の6,830名が死亡した。
  4. 1945年8月、日本がポツダム宣言を受諾し、戦争が終わると、政府は戦勝国となった中国を初めとする連合国が、主として連合国の国民の俘虜など強制労働 被害者について、日本が行った国際法に違反する諸行為につき戦争犯罪として責任追及が行うと考え、これを恐れ、これを免れ或いは最小限に止めるため、当初 は証拠隠滅に努めた。しかし、自己弁護の必要から、後に実態把握と企業と政府の責任を問われないための枠を設けた上での記録作成を行った。これが企業側が 作成した「事業場報告書」と、この基礎の上にたって作成された「外務省報告書」である。これは、以上のような限界がありながら、同時に中国人強制連行・強 制労働の事実を具体的に特定する上では、政府の公文書であり、証拠として現在でも決定的な価値がある。このことが、政府をして中国人強制労働を否定できな いものにしている。
  5. 日本政府は、劉氏が発見された時には、強制連行の上奴隷労働させた事実と責任を否定し、その後、劉氏側から何度も謝罪と賠償を求められたが、これに応えようとしなかった。
    劉氏は、やむなく1996年、この訴訟を提起した。
  6. 訴訟の過程で、被告国は中国人を強制連行・強制労働させた事実につき、また原告が北海道山中にはいり、戦後長期にわたり発見されなかったが、これを発見・ 救出するための具体的な救出策を取らなかった点について、裁判所から毎回のように認否・主張を行うよう釈明を求められたにもかかわらず、これに応じなかっ た。
    劉連仁氏は、昨年9月、待望していた判決を待たずに死亡したので、長男の劉煥新氏らが訴訟を受け継いだ。
  7. 判決は、原告の主張事実中、戦前の強制連行・強制労働の事実を明確に認定した上で、これを先行行為として戦後の救済義務を尽くさずこれを放置した責任を全面的に認めたうえで請求額全額を認容した。
    判決は、不当な奴隷労働に対し耐えかねて、現場を脱出し山中に逃げ込んだ劉氏に対し、これを発見し、救出すべき義務が政府にあったことを、正当にも認定 し、これに対する不履行責任を追及したのである。戦前の不法な行動を引き継いだ政府の無責任さを明らかにするものであり、この判決の意義は大きい。
  8. 判決は、被告国に対し、戦後の一連の行為について、劉氏に与えた精神的損害が大きかったことを認定し、慰謝料として請求金額全額を認容しその支払を命じ た。これは、第2次大戦中に政府が行った強制連行・強制労働について事実認定した上で、これを先行行為として戦後救済義務違反を認めて賠償義務を認めたも のである。戦後の問題は、戦時中の国の一連の行為につながるものであり、基本的には両者を切断して法律判断をすることは不可能である。従って、戦後の違法 判断は戦前の行為の違法性を間接的ながら認めた判決であり、意義がある。
  9. また、判決は、戦後補償裁判に厚く立ちはだかっていた時の経過による権利消滅という壁を乗り越えた。つまり被害の重大性と国が事実を隠蔽しただけでなく、 その後も調査を実施せずに放置した国の責任を認定した。その上で除斥期間制度を適用して国を免責することは正義公平の理念に著しく反すると戦後の責任を認 定した。
  10. この事件の判決は、中国人強制連行・強制労働被害者に対する被害とその違法性を明確にし、これら全ての被害回復のために、全被害者を代表して全国で提起し ている一連の訴訟---札幌地裁、新潟地裁、長野地裁、京都地裁、広島地裁、福岡地裁等の一環をなすとともに、その先駆けとして期待されたものである。
    政府は、本判決に対し控訴することなく判決に服するべきである。国は本判決で認定された中国人強制連行・強制労働被害者の被害全体が明らかにされた事実を受け入れ、問題の全面的解決を図るべきである。
    私たちは、この判決を手がかりとして、ドイツの強制労働問題全面解決を教訓としつつ、私たちがかねて提案してきた「中国人強制連行・強制労働補償基金」構想を実現すべく全力を尽くすことを表明する。

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