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弁護団声明

1 本日、最高裁判所は、中国人強制連行・強制労働西松訴訟事件において、中国人被害者らの損害賠償請求を認めた広島高等裁判所の判決を破棄し,中 国人被害者ら敗訴の不当判決を言い渡した。その理由は,いわゆる個人請求権問題について,日中共同声明によって,個人請求権は実体的に消滅しないが,裁判 上訴求する権能が失われたとするものである。この判決は,中国人強制連行・強制労働西松訴訟事件のみならず,我々弁護団が担当する慰安婦第1次,第2次訴 訟,劉連仁強制連行・強制労働事件訴訟,福岡強制連行・強制労働事件訴訟などにも重大な影響を与える極めて不当な判決である。日中共同声明においては,個 人請求権について一言も触れられておらず,不公正な判断であり,到底受け入れることはできない。

2 しかしながら,同時に本判決は以下のとおり,極めて注目に値する判示を行なった。
第1に,原審が判断した強制連行・強制労働の事実関係の概要を再度述べたうえで適法に確定していることを確認した。

第2に,個人請求権の「放棄」は,請求権を実体的に消滅させることまで意味するものではなく,債務者側で任意の自発的な対応をすることは妨げられないとした。

第3に,「サンフランシスコ平和条約の枠組みにおいても,個別具体的な請求権について債務者側において任意の自発的な対応をすることは妨げられないとこ ろ,本件被害者らの被った精神的・肉体的な被害が大きかった一方,上告人は前述したような勤務条件で中国人労働者らを強制労働に従事させて相応の利益を受 け,更に,前記の補償金を取得していることなど諸般の事情にかんがみると,上告人を含む関係者において,本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすること が期待されるところである」とした。

3 以上のとおりこの判決は,中国人強制連行・強制労働の事実を認め,加害企業が犯した犯罪行為を認め,かつ個人の請求権が実体的には存在していることを 認め,その被害の回復を願う正義の声に,上告人を含む関係者,すなわち加害企業及び国が,被害者らの被害の救済に向けた真摯な努力をすることを,強く求め たものである。

すでに,中国人強制連行・強制労働問題は,1995年以来審理されてきた全国の裁判所においても事実が認められ,中国の一般市民に対し,国と企業が強権 的・優越的な立場の下に,卑劣な手段を用いながら行った犯罪として,著しく人道に反し,人間の尊厳を侵害するものと明白に断罪されている。

したがって,日本国と企業は,この歴史的事実を真摯に受け止め,道義的,人道的な責任として,犠牲になった中国人労働者についての問題を解決するよう努力してゆかなければならない。

すでにILOでは,条約勧告適用専門家委員会によって,この強制連行強制労働問題が慰安婦問題とともに,幾度も解決を促す勧告がなされており,2007年 度においても,「本委員会は、政府が直ちに、その数が年とともに減少し続けている被害者たちの請求に応える措置をとることを希望すると断固として繰り返 す。」と勧告している。

今日本国は,北朝鮮の拉致被害を国際社会へ強く訴えているが,それと同様に,この問題の解決に向けて真剣な取り組みがなされなければならず,自ら犯した加 害行為に対する真摯な反省と取り組みを通じてこそ,また自国民の被害への解決に向けた国際的な支援を受けることができる。

4 過去の犯罪的残虐行為に対して、その事実を真摯に認め、謝罪し、賠償等の解決を行うことは,中国をはじめアジア諸国との真の友好を築くことであり,日 本国が国際社会において信頼を築く上での新しい出発点となる。過去を忘却する者は未来に対しても盲目となる。過去の克服は未来への指針であり,責任のある 国家を築くための礎石であり国益である。

多くの被害者はすでにこの世を去り生存する人達は残り少なくなっている。それだけに、被害者の命のあるうちに、被害の救済と人権の回復を図ることは国と企 業の道義的、人道的,政治的な責任である。また,その責任は生きているうちに果たされてこそ,加害者にとっても本当の許しを請うことができるのである。

私たちは,中国人強制連行・強制労働問題の最終解決に向け,国と加害企業が一日でも早く行動に踏み出すことを改めて強く要求するとともに,被害者と連帯して国内外の支援者と共に最後まで闘うことを決意する。
以上

2007年4月27日

中国人戦争被害賠償請求事件弁護団
団長   弁護士 尾山   宏
団長代行   弁護士 小野寺 利 孝

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