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群馬訴訟・辛崇陽教授の証人尋問の意義と成果

中国人強制連行・強制労働群馬事件--辛崇陽教授の証人尋問終わる(7月28日)
群馬弁護団

1 辛証言の意義
(1)去る7月28日午後、東京高裁第10民事部において、辛崇陽証人(中国政法大学教授)の尋問が無事終わった。中国の国際公法学者がこの種裁判で証言するのは初めてである。

(2)群馬弁護団が辛証人尋問で重点を置いたのは、日中共同声明により個人請求権が放棄されたか否かを考えるうえで、1972年7月下旬に行われた日中国交正常化会議の経過及びその後の交渉経過の中で日中当事国双方の間に放棄意思があったか否かに関する事実関係を、シッカリ見極めようとする視点であった。

最高裁4.27西松判決が前提とした事実関係は、最終事実審たる原審・広島高裁の判決の中で認定された事実であるから、この事実以外の事実(原審に提出されていない書証、特に原審の結審日・平成16年3月30日以降の事実)を基礎とした事実認定に基づく判断であれば、4.27西松判決と異なる判断を下すことは法律上何ら問題なく、同判決を覆すためにはこれしかないという考え方である。

2 辛証言の内容
(1)4.27西松判決は、「サ条約の枠組み」なる概念を持ちだし、これを個人請求権放棄の基礎としている。
この点につき辛証人は、日中共同声明締結交渉において、上記枠組みという概念が持ち出されて議論されたことは一切ないこと明確に指摘している。そして、日本国に対する賠償放棄に関する交渉経過で、中国側は「…戦争賠償の請求権を放棄する。」を主張し、日本側は「…いかなる賠償の請求も行わない…」を主張し、最終的に「…戦争賠償の請求を放棄する…」で纏まった経過を踏まえて、辛教授は、日中共同声明5項で用いられた「用語の通常の意味」(ウイーン条約31条)からすれば、放棄されたのは国家間の賠償請求に過ぎないとしている。

(2)辛証言の大きな成果の一つは、銭其?外交部長の全人代における95.3.7発言(「『中日共同声明』で放棄したのは国家間の賠償であり、中には個人の賠償請求は含まれていない。…」等)の正確性を改めて指摘した点である。

つまり辛証人は、95年当時全人代台湾代表であり、全人代台湾文科会において個人請求権放棄問題につき銭外交部長に質問を行った劉彩品氏との証言前日における協議結果と劉彩品氏作成の陳述書(甲522)に基づき、上記発言の日時、場所、状況、意義等を揺るぎないものにしている。

このため、上記発言を以て「公式に確認できないような不規則発言に類するもの…」とする4.27西松判決に関する最高裁解説こそ、今や根拠がないことが明らかになったといえる。

(3)また辛証人は、劉建超中国外交部報道官による西松判決の前日(07.4.26.)における発言(「(最高裁は)…一方的な解釈を行うべきではない。」等)や当日(07.4.27.)における発言(「最高裁が…行った解釈は違法なものであり、無効である。…」等)、江沢民総書記による 92.4.1.発言(「(中国人民に与えた)巨大な損害について…条理にかなう形で妥当に解決すべきだ…」等)の意義につき、詳細に説明している。

(4)更に辛証人は、中国民間対日賠償請求法律援助専門基金に中国政府の元高官等が参画し、同政府が出資を行っている等の事実から「同基金は、中国政府の立場を代弁している政府機関のような存在」であり、中国政府が民間賠償請求権を放棄していないことを前提にしなくては考えられないことを具体的に証言した。

3 今後の課題
個人賠償請求権の有無は、強制連行問題のみならず戦後補償問題全体を大きく左右する重要性を持っている。このため、日中双方の学者・弁護士・有識者等を糾合したプロジェクトチームを早急に立ち上げ、個人請求権の不放棄を確定する必要がある。そのことが、戦後補償問題に関する今後の司法解決・政治解決に大きく道を拓くことになる。

4 裁判所への期待
日中共同声明締結の際の存在したあらゆる事実を以てしても個人請求権に関する放棄意思を読み取ることはできない。却って、上記2記載の諸事実は、何れも個人請求権の存在を前提とするものである。

つまり、これら諸事実を踏まえ、辛教授が強調する手法(甲491)に基づいてウイーン条約を適用した場合、本件控訴人らをはじめとする中国人労働者たちの個人請求権は今なお存在するとみることが、日中共同声明5項の正しい解釈である。

東京高裁第10民事部が4.27西松判決に盲従することなく、新判断を出されるよう心より期待するものである。

09.07.30記

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