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海南島訴訟:最高裁決定に対する弁護団声明

1 2010(平成22)年3月2日,最高裁判所第3小法廷(那須弘平裁判長)は,日本軍によって「慰安婦」とされた中国海南島の被害者が日本政府に対して謝罪と名誉回復並びに損害賠償を求めた上告事件(海南島戦時性暴力被害賠償請求事件)に関して,上告人らの上告を棄却し上告受理申立を不受理とする決定を言い渡した。

2 本件は,中国海南島において,旧日本軍(主として海軍)が中国人の少女を強制的に拉致・監禁し,継続的かつ組織的に戦時性奴隷とした事案である。

下級審は,本件上告人らの被害について,「加害行為を受けた当時,14歳から19歳までの女性であったのであり,このような本件被害女性らに対し軍の力により威圧しあるいは脅迫して自己の性欲を満足させるために陵辱の限りを尽くした軍人らの本件加害行為は,極めて卑劣な行為であって,厳しい非難を受けるべき」と厳しく断罪し,そのうえで「本件被害女性らが受けた被害は誠に深刻であって,これが既に癒されたとか,償われたとかいうことができない」(東京高裁判決28頁)と認定した。

また本件被害に関し,PTSDはもとより「破局的体験後の持続的人格変化」というより重い被害事実の認定もした(東京高裁判決30頁)。

その上で国家無答責の法理を排斥したうえ民法715条1項を適用し上告人らの損害賠償請求権を認めたのである。

3 しかし,下級審判決は,2007.4.27最高裁判決を踏襲し,控訴人らの損害賠償請求権について,日中共同声明第5項により「裁判上訴求する権能」が放棄されたことを理由に控訴を棄却したことから,最高裁判所に上告をしたものである。

4 上告人らは,上告するにあたって,日中共同声明第5項により個人の「裁判上訴求する権能」を放棄したか否かについて,全人代において中国側の銭其?外相(当時)の発言を引き出した元全人代代議員劉彩品氏の証言を求め証拠として陳述書を提出するとともに具体的に「裁判上訴求する権能」は放棄されていないことに鑑み,日本政府は,上告人ら被害者に対し,賠償すべきであることを具体的に主張・立証した。

ところが,最高裁判所第3小法廷は,かかる主張・立証を一顧だにせず門前払いの決定を下したものである。
この事実は,最高裁判所が,人権保障の砦としての自らの役割を放棄したに等しい行為で厳しく非難されなければならない。

5 本件上告棄却によりこれまで裁判所に提訴された「慰安婦」事件はすべて被害者側の敗訴により終了したことになるが,これにより日本政府が免責されることになってはならない。

6 すでに日本政府は,二国間条約で損害賠償問題は解決済みであるとの主張しながらも,「慰安婦」の問題について解決されていない問題があると認め,1993年,河野洋平官房長官の談話(以下「河野談話」という)において,被害者に対して事実を認め謝罪をし,適切な措置をとることを表明している。

しかし,日本政府は,「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を設置対応したに止まっているが,同基金によってすら中国人被害者に関しては何らの措置もとられていない。

それゆえ,本件上告棄却で本件問題が解決されたわけではなく,日本政府は,河野談話の見地にたって解決しなければならない義務を負ったままである。

しかも,それは過去の戦後処理の問題ではなく,被害者らが今なお苦しみの中で生きており,まさに現代において速やかに解決すべき課題である。

7 これまでアメリカ連邦下院における対日謝罪要求決議の外,カナダ,オランダ,EU議会,国連人権理事会,国連自由権規約委員会,ILO条約勧告適用専門家委員会等々で解決を求める決議がなされている。このように国際社会は,被害を受けた女性の尊厳と人権の回復のための真の措置をとるよう日本政府に強く迫っている。
国内においても宝塚市,清瀬市,札幌市,福岡市等々各地方自治体において「慰安婦」問題の解決を求める決議があいついでなされている。

このように,解決を迫る世論は国内外を問わず高まっている。

8 今,日本政府に問われているのは言葉ではなく行動である。鳩山首相は就任直後に東アジア共同体構想を提唱したが,今必要とされているのは河野談話を承継し,各国議会決議や国際機関の勧告を受けた具体的かつ真摯な対応である。

日本政府は,本件において下級審で厳しく認定された加害の事実と深刻な被害の事実を真摯に受け止め,被害者一人一人が納得するように謝罪をし,その謝罪の証として適切な措置をとるべきである。

私たちは今後も,日本政府に対してこれら被害者の要求が実現されるまで戦い続ける決意を表明するものである。

2010(平成22)年3月9日

海南島戦時性暴力被害賠償請求事件弁護団
中国人戦争被害賠償請求事件弁護団

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