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弁護団声明

1 本日,東京高等裁判所第21民事部(渡邊等裁判長)は,日本軍によって「慰安婦」とされた中国海南島の被害者が日本政府に対して謝罪と名誉回復並びに損害賠償を求めた控訴請求事件(海南島戦時性暴力被害賠償請求事件)に関して,控訴人らの控訴を棄却する判決を下した。

2 本件は,中国海南島において,旧日本軍(主として海軍)が中国人の少女を強制的に拉致・監禁し,継続的かつ組織的に戦時性奴隷とした事案である。

本判決は,「本件被害女性らは,本件加害行為を受けた当時,14歳から19歳までの女性であったのであり,このような本件被害女性らに対し軍の力により威圧しあるいは脅迫して自己の性欲を満足させるために陵辱の限りを尽くした軍人らの本件加害行為は,極めて卑劣な行為であって,厳しい非難を受けるべきである。このような本件加害行為により本件被害女性らが受けた被害は誠に深刻であって,これが既に癒されたとか,償われたとかいうことができないことは本件の経緯から明らかである。」(判決書28頁)と認定している。

本件被害の質的側面ににおいてもPTSDはもとより「破局的体験後の持続的人格変化」も認定している(判決書30頁)。

以上の事実認定を踏まえ,国家無答責の法理を排斥したうえ民法715条1項を適用し控訴人らの損害賠償請求権を認めた。

3 しかしながら,本判決は,2007.4.27最高裁判決を踏襲し,控訴人らの損害賠償請求権について,日中共同声明第5項により「裁判上訴求する権能」が放棄されたことを理由に控訴を棄却した。

もっとも本判決は,最高裁判決と同様,個人の賠償請求権につき,その権利は実体的には消滅しないと判示した。

これは個人の賠償請求権につき,裁判上訴求する権能のみが失われたとするものであり,個別具体的な請求権について,債務者側において任意の自発的な対応をすることは何ら妨げられないと認めたものである。

4 この点,日本政府も,二国間条約で損害賠償問題は解決済みであるとの主張しながらも,「慰安婦」の問題について解決されていない問題があると認め,1993年,河野洋平官房長官の談話(以下「河野談話」という)において,被害者に対して事実を認め謝罪をし,適切な措置をとることを表明した。

そして,日本政府は,「慰安婦」問題につき「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を設置したが,同基金によってすら中国人被害者に関しては何らの措置もとられていない。

したがって,本判決で損害賠償請求権が裁判上訴求できないからといって問題が解決されたわけではなく,未だ河野談話の見地にたって解決されなければならないことにかわりはない。

しかも,それは過去の戦後処理の問題ではなく,被害者らが今なお苦しみの中で生きており,まさに現代において速やかに解決すべき課題である。

5 アメリカ連邦下院における対日謝罪要求決議の外,カナダ,オランダ,EU議会,国連人権理事会,国連自由権規約委員会,ILO条約勧告適用専門家委員会等々で解決を求める決議がなされている。このように国際社会は,被害を受けた女性の尊厳と人権の回復のための真の措置をとるよう日本政府に強く迫っている。

国内においても宝塚市,清瀬市,札幌市に続いて福岡市議会において3月25日解決を求める決議が賛成多数で可決された。

このように解決を迫る世論は国内外を問わず高まっている。

6 今,日本政府に問われているのは言葉ではなく行動である。真に河野談話を承継し,また女性達の人権を侵害した問題であると理解しているのであれば,各国議会決議や国際機関の勧告を受け,真摯な対応をすべきである。

日本政府は,本判決で厳しく認定された加害の事実と深刻な被害の事実を真摯に受け止め,被害者一人一人が納得するように謝罪をし,その謝罪の証として適切な措置をとるべきである。

私たちは直ちに上告するとともに,日本政府に対してこれら被害者の要求が実現されるまで戦い続ける決意を表明するものである。

2009(平成21)年3月26日
海南島戦時性暴力被害賠償請求事件弁護団
中国人戦争被害賠償請求事件弁護団

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