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遺棄化学兵器処理事業関連会社に対する特別背任容疑の捜査報道について

10月17日,マスコミ各社はいっせいに,中国における旧日本軍の遺棄化学兵器処理事業を受注している「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI)の元社長が,事業資金のうち約1億円を不正流用したとの疑いで,東京地検特捜部がPCI関連会社を捜索したことを報じている。

そもそも,日本政府による遺棄化学兵器処理事業とは,「人の安全を確保し,環境を保護することを最優先としつつ...化学兵器禁止条約の義務を履行することを目的とする」事業である(「中国遺棄化学兵器処理事業基本計画書」)。つまり,遺棄化学兵器処理事業とは,化学兵器による非人道的な人身被害の根絶という化学兵器禁止条約(1995年批准)の目的実現のため,何よりも「人の安全の確保」を最優先の目的,理念とした事業でなければならないのである。

ところが,これまで遺棄化学兵器処理事業に注ぎ込まれた数百億円もの事業資金は,「人の安全の確保」から最も遠ざけられた人々,すなわち,旧日本軍による遺棄化学兵器によって身体を蝕まれ,現在も苦しんでいる中国人被害者らにほとんど行き渡ることがなかった。旧日本軍の遺棄化学兵器によって亡くなった被害者とその遺族は無念の思いを抱き,生存する被害者たちは今も日々健康被害に苦しみ続けている。このような現実を直視すれば,遺棄化学兵器処理事業の目的とその理念が十分現実化しているなどとは到底言い得ないはずである。

しかも,仮に今回のマスコミ報道が真実だとすれば,本来なら遺棄化学兵器処理事業によって救済されるべきなのに救済されていない中国人被害者が多数いる一方で,遺棄化学兵器処理事業を利用して不正な個人的利益を貪る輩が,事業を「食い物」にしていたということになる。これまでも遺棄化学兵器処理事業についてはその不透明さが問題となっていたが,緊急に必要とされるべき中国人被害者らの救済を放置し,更に国内の不正流用問題までも見過ごしてきたというのであれば,日本政府の責任は重大である。そして,今後もこのような事態を見過ごすことは,遺棄化学兵器処理事業の目的や理念の実現が不可能であることはもちろんのこと,化学兵器禁止条約の実施という崇高な国際的責務をわが日本が果たすことも到底不可能というほかなく,日本の国際的信頼が失墜することは避けられないであろう。

われわれは,今回の事件を引き続き注視し,遺棄化学兵器処理事業が不正利益享受の温床となることのないよう監視するとともに,今後,遺棄化学兵器処理事業が本来の目的と理念に基づいて,旧日本軍の遺棄化学兵器による被害者の救済を実施する機能を持った事業となるよう強く要求するものである。

2007年10月18日
遺棄毒ガス等被害賠償請求事件弁護団
連絡先:東京都新宿区新宿1-6-5 シガラキビル9階 ピープルズ法律事務所
弁護士 南 典 男(みなみ のりお)
電話:03-3354-2555
FAX:03-3354-9650

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