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遺棄毒ガス・チチハル訴訟東京地裁判決・弁護団声明

弁護団声明
2010年 5月24日
チチハル遺棄化学兵器被害訴訟弁護団

1 本日、東京地方裁判所民事第13部(山田俊雄裁判長・上拂大作裁判官・川崎博司裁判官)は、チチハル遺棄化学兵器被害訴訟事件につき、原告らの国に対する賠償請求を棄却する判決を言い渡した。満腔の怒りをもって抗議するとともに、司法としての役割を放棄した裁判所のあり方に落胆を禁じ得ない。

2 本件は、2003年8月4日、中国黒竜江省チチハル市のマンション工事現場から掘り起こされた5本の容器入り毒ガス剤(イペリットとルイサイトの混合剤)によって引き起こされた事故の責任を問うものである。

その被害は、旧日本軍が遺棄した化学兵器による事故としても、未曾有のものであった。被害者の数は、子どもを含む44名にのぼる。毒ガス剤をほぼ全身に浴びた1名は18日間に及ぶ想像を絶する苦痛の末に命を落とし、命をつなぎとめた43名も、いまだ、呼吸器症状や目の症状、免疫機能の低下や神経障害などの重篤な後遺症に苦しんでいる。就労能力を失った原告たちの多くは、家族関係も破綻し、社会からの差別にもさらされ、子どもたちは将来の夢を失った。

失われた命・健康はもう元に戻せない、でもせめて、安心して医療を受け、生活できるようにしてほしい。そんな思いから、被害者たちは政府に要請を続けた。ところが、時の政府がこれを拒み続けたため、被害者たちが最後の手段として選択したのが、本件国家賠償請求訴訟の提起であった。

3 本判決は、本件被害の原因となった毒ガス剤入り容器が、旧日本軍によって埋設・隠匿され、遺棄されたものであることを明確に認定し、これがソ連軍等により遺棄されたものであるなどとした被告国の主張を排斥している。また、本件毒ガスが発見された現場付近は、戦中、チチハル飛行場の近くにあり、関東軍化学部(516部隊)の弾薬庫であったことを明確に認め、さらに、原告らが受けた被害が甚大であり、いまなお重篤な後遺症に苦しんでいる事実も明確に認定している。

しかしながら本判決は、旧日本軍によって遺棄・隠匿された化学兵器は大量かつ広範囲に及ぶところ、本件現場付近の探索を他の地域に優先すべきであったと認めることは出来ないとして、被告国の作為義務を否定した。このような判断によって被害防止のための調査を全く行っていない被告国を免責することは、法の拠って立つ正義公平の理念に反するものであることは言うまでもない。

4 判決は、原告らの生命・身体という重要な法益に対する危険性があり、これが切迫した状態にあったことを認めた。その上で、被告の担当者において本件事故が発生した平成15年8月までには、チチハル市内における旧日本軍の駐屯地やその軍事関連施設付近に存在する毒ガス兵器が、付近住民と接触することにより、付近住民の生命・身体に危害を及ぼすことを予見することは可能であったとし、かつ、本件事故により原告らが受けた生命、身体への被害は甚大であり、その精神的苦痛、肉体的苦痛は極めて大きいものであったことは明らかであるとも認めている。本件判決のこれらの認定からしても、日本政府の政治的責任は明確と言わなければならない。政府は、この判決の認定を真摯に受け止め、全ての遺棄化学兵器被害者に対する医療支援・生活支援の政策を実現すべきである。私達は、今後法廷内外において、この政策形成を実現するために全力を尽くすことを表明するものである。

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