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不当な見解にはきびしい批判を 正当な見解は成果として確認を

弁護団長 尾山宏

今回の判決には、きびしく批判すべき部分と成果として評価できる部分とが混在している。そのことを正確に見定めることが、いちばん大切な点だ。

一 判決の不当な点

判決の不当な点は、この判決が国際法・国際私法の法解釈を論ずるに先立って、きわめて特異で珍妙な見解を示していることである。この法解釈の枠からはずれ た見解によって、その後の法解釈が決定されている。その意味ではこの判決は、法解釈の名にも裁判の名にも値しない。

その特異・珍妙な見解の第一は、日中共同声明・平和友好条約が締結されて戦争状態が解消されたのに、本件のような個人の訴訟が提起されることは、友好関係 をそこなう有害無益なものと断じていることである。そこではこのような訴訟は再度の戦争状態を引き起こすとまで言っている。

このような見解が、まったく現実性のない荒唐無稽な空想の所産であることは、誰の目にも明らかである。それだけではない。十五年戦争を通じてわが国は、多 数の中国人に甚大な被害を与えている。このことはこの判決も認めているが、そのために現在なお精神的苦痛に悩まされている中国人が多い。その心の傷をいや すには、誠実な謝罪と賠償、教育によって歴史の真実を次代の国民に伝えていくことこそが必要なのである。侵略戦争や非人道的行為を再び起こさないためには このことが不可欠だ、というのが世界の常識である。この判決の見解は、この世界の常識に反している。

第二に、この判決は、被害者に賠償することが市民法レベルの正義であろうが、戦争の再発を防止することがより高次の正義なのだから、そのために市民法レベルの正義が犠牲にされてもかまわないと述べている。

しかしこれも倒錯した考えであって、日本国憲法と国際人権法・人道法の価値観に反している。日本国憲法は、戦前日本が個人の尊厳と個人の価値をふみにじっ たことへの反省から、個人の尊厳と個人の価値の尊重を基本原理としている(憲法一三条)。国連も世界人権宣言や国際人権規約などを採択し、同様な原理を確 立してきた。そしてそのことが、平和を護り民主主義を確立するうえでの基礎になると考えられている。だからこの判決のように、市民法(個人)のレベルの正 義と平和の擁護とが相互に矛盾しているとすることには、今日の普遍的な価値観と矛盾している。

二 判決の正当な点

他方でこの判決は、日中戦争が「中国及び中国国民に対する弁解の余地のない帝国主義的、植民地主義的意図に基づく侵略戦争」であったこと、日本軍による非 人道的行為により「多数の中国国民に甚大な戦争被害を及ぼしたことは、疑う余地のない歴史的事実」であること、南京虐殺や七三一部隊による細菌兵器の大量 生産とそのための人体実験も疑う余地がない事実であること、および本件の加害行為が非人道的なものであり、本人や夫、親、兄弟らが悲惨な被害をうけたこと を明言している。これらは、判決文をみれば分かるように、自由主義史観を念頭において、これを正面から批判したものであることは明らかである。

三 今後の裁判と運動の一層の発展にむけて

私たちは、この判決の誤った点をきびしく批判するとともに、自由主義史観とこれに対する良識ある国民の側の反撃がなされているさなかに、自由主義史観批判 を行っていることを裁判と運動の成果として確認し、確信をもって今後の勝利の展望を切り開いていくことが大切である。(1999年10月10日)

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