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戦後補償初の学者証言実現-内池慶四郎教授

1998年6月17日、7月22日の二日間にたって、731部隊・南京大虐殺・無差別爆撃訴訟で、戦後補償裁判初めての学者証言が実現しました。

弁護士 兵藤 進(1998年8月25日)

1998年6月17日、東京地方裁判所最大の第一〇三号法廷では、百人を超える傍聴人の静かに耳を傾ける中で、午後三時頃、慶應義塾大学法学部教授を退官 された直後の、内池慶四郎慶応大学名誉教授の物静かな、穏やかな、しかし、かなり頑固なともいうべき教授独自の陳述が為されていた。この重要な法廷での教授の陳述は、時効・除斥制度の本質的な内容についての考え抜かれた貴重な解説に始まり、教授の四十年をも超えんとする学者生活の成果である民法制定の歴史 的沿革・民法解釈学の歴史的な変遷論・解釈の基本的な方法論をしっかりと踏まえた上での、民法七二四条論、特にその後段の法意論を説いて余す所のないもの でありました。

この中国人戦争被害者損害賠償請求意見のすべてにおいて、「時効・除斥に関する原告の主張」の是非をめぐっての闘いは、「最後の闘い」であります。弁護団 としては、「主たる若き精鋭先頭隊として、明晰にして説得力のある合理的な論理を大胆に提示される国際公法の阿部浩巳神奈川大学助教授を、そして中核とな る実戦部隊として、国際私法において鋭い論法で容赦のない優れた論理を展開される北海道大学の国際司法の教授、そして、人間性と強烈な情熱に裏打ちされた理 性の人明治学院大学の浅井基文教授らの部隊が、仮に撤退を余儀なくされた時、最後に、雌雄を決するのが、わが温厚にして厳しい紳士内池教授の本隊である」 と考えております。

ところで、この舞台での内池先生の陳述のハイライトは、本件事件の時効・除斥問題に明るい希望を投げかけるような平成十年六月十二日の最高裁判所第二小法廷判決についての学者としての「初めての解説と批評」でありました。

この判決について、内池先生は、次のような傾聴すべき趣旨の証言をされました。「この判決は、『不法行為の被害者が、不法行為の時から二十年を経過する前 六カ月内において右不法行為を原因として心身喪失の状況に在るのに法廷代理人を有しなかった場合においてその後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就 職した者がその時から六カ月以内に右損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法一五八条の法意に照らし、同法七二四条後段の効果は生じな いものと解するのが相当である』と判示したが、この判決は、更に、次のように評価することができる」とされました。即ち、「本判決は、従来の学説が一般的 に肯定している時効停止事由の除斥期間への類推という手法を更に一歩進めて、信義則ないし権利濫用の法理から停止事由を類推せざるをえない論拠を引き出し ているわけであり、このことは一面においては時効停止事由を広く類推していることに歯止めをかけた様にも見えるが、その歯止めに基準は、援用権の信義則違 反・権利濫用の禁止という一般条項的判断に復帰していると見ざるをえない。このような意味で、本判決の理由付けは、形式的には、平成元年判決(編集部注: 鹿児島の砲弾爆発事件についての判決)との論理的整合性を保つもののように装いつつも、実質的には、一歩踏み込んだ内容をはらんでいる。本判決は、実質的 には、河合裁判官の少数意見が指摘するように、平成元年判決の主張を内容的に覆している点で、実は判例変更の場合になるように思われる。私見は、本判決の 論理を平成元年の形式論を実質的に乗り越えようとする除斥期間説の新たな展開として積極的に評価するものではあるが同じに除斥期間説の論理的限界と実務上 の困難を端的に露呈するものに他ならないと感ずる。私見は、河合少数意見の説く不法行為責任の制度的意味合いと共に、その不法行為責任の期間による制度法 である民法七二四条の元来の立法趣旨からして、本条後段の二十年期間が、時効期間であることを正面から肯定し、その援用が信義則違反・権利濫用となるもの か、否かをストレートに判定すべきものであったと考える」と。

平成元年六月十二日判決についての、これほど明晰にして要を得た理解と批評が、内池教授を措いて何人に期待できるでありましょうか。時の流れと具体的な事 件の事実関係は必ずや平成元年判決を見事に正面から、名実ともに変更するそのような判決を生み出すに違いありません。

わが弁護団の要請に応えて、堂々たるそして素晴らしい内容の証言をされた内池教授に、衷心より、深く感謝の念を捧げたいと存じます。

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