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声明

本日,東京高等裁判所第24民事部(大喜多啓光裁判長)は,控訴人らが,日本政府に対し,旧日本軍が中国に遺棄してきた毒ガス・砲弾の被害による損害賠償を請求していた事件の控訴審で,控訴人らの請求を棄却する不当な判決を下した。

日本政府は一審で事実関係につき認否すらしなかったにもかかわらず,控訴審になり事実を争い,控訴審では,日本軍が毒ガスを遺棄したかどうかが最大の争点となって審理された。

本判決は,一審同様,日本軍が大量の毒ガス兵器を生産し,中国に持ち込んで配備し,終戦前後に日本軍の兵士が,上官の命令に基づき毒ガス兵器を中国国内に 遺棄した事実を認め,加えて,終戦後日本軍は毒ガス兵器に関する情報を連合軍に秘匿しようとしていたこと,また大量に中国に持ち込まれた毒ガス兵器が終戦 に伴う武装解除により,原則的にソ連軍などに引き渡されたと認め得る証拠はないことを認定し,本件各毒ガス兵器について,いずれも日本軍により遺棄された ものであることを認定した。

なお,本件各毒ガス兵器につき,日本軍のものではなく,ソ連軍あるいは国民党軍のものである可能性があるとの国の主張を証拠に基づき明確に排斥した。

その上で作為義務についても,「国際法でその使用を禁止されており,人の生命・身体に重大な危険を加え得る毒ガス兵器を遺棄し,管理されない状態に置くこ とは,その存在や危険性を知らない一般私人がこれに触れるなどすることにより,その生命・身体に被害をもたらす危険を生じさせるものであるから,毒ガス兵 器を遺棄することは,違法であると」違法な先行行為の存在を認め,その危険性,及び切迫性の要件も認めた。

また予見可能性についても,国は終戦処理において,終戦後中国から復員した日本軍関係者から事情聴取をしていたことが認められ,中国に遺棄された毒ガス兵 器は大量であったから,これに関係した日本軍関係者も多数に上るので,毒ガス兵器の遺棄に関する情報をある程度入手することは可能であった等と判示し,予 見可能性の要件も認めた。

しかしながら,本判決は,結果回避可能性について,毒ガス兵器の回収措置あるいは調査などの申し出は中国政府の同意がない以上不可能であった,あるいは, 遺棄された日本軍の毒ガス兵器は大量で,その範囲は広範囲に及び,したがって,その遺棄された場所も多数に上り,しかも,地下に埋設され,あるいは河川に 遺棄されたものもあったから,遺棄された場所を逐一具体的に特定するまでの情報を入手することは,必ずしも容易ではなかったなどとして,結果回避可能性を 否定した。

本件判決は,できるだけ多くの場所で,できるだけ発見されにくい方法で遺棄・隠匿し,関係書類も消却して,それで年月が経てば,遺棄兵器が存在する場所を 具体的に把握することができなくなって,結果回避可能性がなくなり,作為義務も認められなくなるという判断であり,極めて不当な判決である。

控訴人ら被害者は,旧日本軍により遺棄された毒ガス(イペリット・ルイサイト)により慢性気管支炎を含む呼吸器系障害,胃潰瘍等の消化器系障害,皮膚障 害,遅発性慢性角膜炎等の眼障害,中枢神経系の障害など,時間の経過とともに全身に障害を受け,ほとんど全ての被害者が稼働できない状況である。

日本政府は,大久野島の被害者,曽根製造所,旧相模海軍工廠等で被害を受けた日本の被害者には,不十分ながらも一定の援護措置を施しているが,中国人の被 害者に対しては,2003年8月4日にチチハル市で発生した遺棄毒ガス被害者の一部に見舞金を拠出した他には,全く何らの賠償も補償もしていない。

本判決は,毒ガス兵器による重大な被害及びその被害が日本軍により遺棄したことに起因することを認定しており,本判決によっても国の政治的責任は免れない。

日本政府は,控訴人らに賠償し,さらに中国国内における旧日本軍による遺棄毒ガス兵器被害者への医療支援,生活支援を含む被害者全体の救済を一日も早く実現すべきである。

弁護団は直ちに上告するとともに,本日の判決を契機にして,早期の全面解決を強く求め,内外の世論と運動を力にしつつ,これら被害者に対して,早期の救済をはかるべく,最後まで戦い抜く所存であることを表明し,本判決に対する声明とする。

2007年3月13日
遺棄毒ガス・砲弾被害賠償請求事件弁護団

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