Home > All連帯 > | その他 > | ハイナンNET > | 中国人「慰安婦」裁判を支援する会 > | 強制連行全国ネット > | 東京 > 「慰安婦」問題・米議会決議案の波紋

「慰安婦」問題・米議会決議案の波紋

前田 朗(東京造形大学)
日本軍性奴隷制(「慰安婦」問題)をめぐる決議案が米議会に提出され、安倍晋三首相が「名答弁/迷答弁」を繰り返したためにアメリカのみならず世界の良識の顰蹙を買った。

日本では当初の報道はおざなりで、しかも安倍首相や自民党政治家の放言を小さく報じる程度であった。しかし、アメリカのメディアが大きく取り上げるや、ア ジアやヨーロッパにも飛び火し、ようやく日本でもそれなりに報道されるようになった。安倍首相はだんまりを決め込むかと思えば、ブッシュ大統領に泣きつい て事態の沈静化をはかった。猫かぶり路線しかない。慰安婦への強制と日本軍の責任を認めた河野洋平官房長官談話の「見直し」(破棄と事実の隠蔽)を呼号し てきた安倍首相が、一転して河野談話の継承と口にせざるを得なくなった。

日本のメディアや政治家の関心は「なぜいまアメリカで決議案なのか」に集中した。民主党の躍進や、決議案を提出したホンダ議員の選挙地盤事情だとか、イラ ク情勢をめぐる駆け引きだとか、日米安保との関係など意味不明の憶測も含めて、様々に取りざたされた。しかし、単純な事実が見過ごされている。

決議案は今回初めて登場したわけではないし、ホンダ議員が始めたわけでもない。性奴隷制問題の解決を求めるNGOの国際的な連帯活動の上に決議案があるのだ。
この問題が浮上して、最初に大きく取り上げられたのは国連人権委員会や人権小委員会であった。九〇年代を通じて、テオ・ファン・ボーベン「重大人権侵害」 報告書、クマラスワミ「女性に対する暴力」報告書、マクドゥーガル「戦時性暴力」報告書などの積み重ねによって、性奴隷制問題の法的解決の必要性が明らか になっていった。議論の決着はついていた。後は日本政府に責任を認めさせるだけだ。ところが、日本政府は「アジア女性基金」というごまかしの政策で逃げ続 けた。

そこで取り組まれたのが「女性国際戦犯法廷」であった。日本、アジアの被害各国、そして世界の女性たちの連帯による運動の成果として、二〇〇一年のハーグ判決が獲得された。女性法廷を取材したNHK番組に政治的圧力をかけて改編させたのが、まさに安倍晋三であった。

その後も、国際連帯は続いてきた。女性法廷の成果を世界に伝える作業、番組改編のNHK訴訟、アジアの女性連帯会議、そして日本の戦争責任を追及する国際 連帯協議会。こうした活動の中で、国連やアメリカへの働きかけが続けられた。その成果が米議会決議案である。戦時における女性に対する暴力の抑止を願う国 際的な人権運動の結果なのだ。アメリカ国内の政治的思惑や、その他の諸要因の影響を受けてはいるものの、基本はここにある。このことを見ておかなければ、 今回の決議案の意味は理解できないし、今後の運動の方針も見失われることになりかねない。

日本軍性奴隷制という戦争犯罪と人道に対する罪、被害を受けた数知れぬ女性たちの悲劇は隠蔽しようとしても、歴史の彼方から必ず甦ってくる。もはや消すことのできない悲劇にいかに向き合うのかが改めて問われている。

Home > All連帯 > | その他 > | ハイナンNET > | 中国人「慰安婦」裁判を支援する会 > | 強制連行全国ネット > | 東京 > 「慰安婦」問題・米議会決議案の波紋

検索
解決へ向けた取り組み
おすすめ書籍

Return to page top