Home > 風を読む > 教科書採択の行方は

教科書採択の行方は

中学校教科書の採択が終わり、多くの国民とアジアの人びとが反対してきた新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)の教科書(扶桑社版)の採択率は、歴 史0.39%(約4860冊)、公民0.19%(約2350冊)に終わりました。「つくる会」が掲げた採択率10%以上の目標は完全に阻止できました。採 択したのは、公立中学校の採択地区(583)では、大田原と杉並の2地区だけで、その他に、東京都立と愛媛県立の中高一貫校とろう・養護学校、滋賀県立中 高一貫校、ごく一部の私立中学校が採択しています。それだけに、この教科書を、あえて採択した大田原市や杉並区、東京都・滋賀県・愛媛県の教育委員会の異 常さが浮き彫りになっています。

「つくる会」は、「つくる会」を支持する首長、教育長を増やし、それによって「つくる会」支持の教育委員を送り込んで、教員や市民の意見を無視して、上か らの政治的圧力で教科書を採択させようとしました。「つくる会」教科書を採択させるために、自民党がなりふり構わないで圧力をかけ、情勢は容易ではなく、 「つくる会」の「あぶない教科書」が各地で採択される危険性がありました。

きびしい状況の中で、これだけの成果をあげたのは、全国各地の市民などの草の根の運動によるものです。「つくる会」教科書の採択に反対する運動は、4年前 よりも確実に広まり、活動する市民組織も前回よりは増え、広がり、市民・教員・保護者・労働者・弁護士・在日コリアンや中国人などによる広範な共同がつく られてきました。さらに、韓国の市民組織・アジアの平和と歴史教育連帯が日本の市民運動と連携して多様な活動を展開したことも重要でした。

この成果は、市民などによる地域の草の根の民主主義活動が、自民党・「つくる会」・日本会議などの右派連合に打ち勝ったということであり、その意義はきわめて大きいといえます。

しかし、これですべて良かったとはいえません。「つくる会」は4年後に三たび挑戦する、と表明しています。私たちには、次のような課題が残されています。

まず、今回採択された地域・学校の問題です。「つくる会」教科書を使わされる学校の子ども、保護者、教員、そしてその地域の住民にとっては深刻な問題で す。採択されたところでは、「つくる会」教科書を忠実に教えるよう強制され、違反すれば処分の対象とされかねません。だからこそ、採択されたところでは、 採択撤回の運動をいっそう広め、それを通じて「つくる会」教科書批判の世論を地域に広めていくことが重要です。

次に、教科書の内容を改善し、4年後に「つくる会」教科書を阻止するためにも採択制度を早急に改善することが重要です。「つくる会」の不当な教科書攻撃に よって、扶桑社以外の教科書の内容がいっそう悪くなっています。各社が、日本の侵略・加害の記述を大幅に後退させ、記述をあいまいな表現に変えてきたの は、「つくる会」や政治家の攻撃もありますが、「つくる会」の策動によって教科書採択制度が改悪され、現場教員の意見を排除・軽視して教育委員会が採択す るようになったことが一番大きな直接の原因です。また、今回の採択を通じて、たった5~6名の教育委員によって教科書を採択する不合理性がますます明らか になってきました。教育委員の「思い」で票決によって採択する方法が定着し、「つくる会」支持の教育委員が増やされれば、容易にこの教科書が採択されるこ とになります。

政府が「近い将来学校ごとの採択にする」と閣議決定した1997年から8年もたっています。私たちは、この決定をすみやかに実行するよう文部科学省に要求 し、それが実現するまでは、学校や教員の意見が尊重され、保護者・市民の意見を反映して、教科書が採択されるよう改善を求めていくことが重要です。検定・ 採択を中心とした教科書制度の改善に向けて、大きな議論を全国で展開する必要があります。

今回の活動と成果は、教育基本法・憲法改悪を阻止する各地と全国の活動をさらに発展させ、さらに、「日の丸・君が代」強制反対、ジェンダーフリーや性教育攻撃などを許さない活動を広める大きな力になることはまちがいありません。

俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長

Home > 風を読む > 教科書採択の行方は

検索
解決へ向けた取り組み
おすすめ書籍

Return to page top