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第24回:列に並ぶ

二十数年前はじめて北京へ行った時、 バスに乗車できなかった。第一にバスを待っている人びとは並んでいない、第二に降りる人が降りてから乗る人が乗るというルールがない。そのためバスの扉が 開くとたいへんな無秩序が出現し、その混乱を経て、こぼれ落ちそうな乗客を詰めこんでバスは発車していく。それに慣れていなかった小生は、バスを数台乗り そこね、学習をつんでからようやく何台目かのバスに乗ったのであった。

また列車の切符を買う時も、横から割り込む人が多く、売り場の狭い窓口までたどり着き切符を入手するまでが一大事業であった。「普遍的人権などというもの はなく、中国には中国の人権概念がある」というから、きっとこれも「中国の国情に合った」マナーなのかもしれないと思い直したりもしたが、どうも釈然とし なかった。

「衣食足りて礼節を知る」(管子)と言われるが、現在の中国ではどうだろうか。確かにそのころよりはずっとよく なった。バスの混雑も緩和されたように感じられる。当時は庶民にとってバスと自転車と徒歩以外にろくな移動手段がなく、バスの本数も少なかったからあんな 混乱が日常になっていたのかもしれない。

しかし、社会的マナーはまだまだ上等とは言えない。バスも地下鉄も扉が開くと、相変わらずわれ先に乗り込もうとする人も多い。報道によると北京市では今年 二月から毎月十一日を「列に並ぶ日」と決定し、「秩序を守る文明市民になる」キャンペーンを始めたという。結構なことである。やはり中国人も列に並ばない のは、非文明的と思っていたのだとあらためて感じた。

昨年、北京の地下鉄西単駅で、切符を買う人と、ICカードのチャージをする人がきちんと二列に並んでいるのを目にした。本当に自分の目を疑った。「中国人もやればできるじゃん」、階段を下りながら中国の「文明化」にひそかに喝采した。(井上久士)

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