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第22回:文明とは何か

むかし中学校の歴史の授業で世界の四大文明というのをおそわったことがある。今から七、八千年前のエジプト・メソポタミア・インド・中国で農耕がおこなわれるようになって、人類の文明が始まったというわけだ。なるほど人類の文明は一万年近くにもなるのである。

と思っていると、明治維新のあと世の中に「文明開化」の風潮が生まれましたとくる。開化というからには、それ以前の江戸時代は「未開」ということになろ う。どうやら文明が西洋からやってくるまで日本には文明はなかったかのごとくだ。福沢諭吉は、「文明論之概略」(一八七五年)でヨーロッパ・アメリカは文 明国、トルコ・中国・日本などアジアは半開国、アフリカ・オーストラリアは野蛮国といっている。

福沢はその十年後、「脱亜論」を書いて日本は文明国になった、しかし中国と朝鮮は全然ダメだから「世界文明諸国の分割に帰すべきこと一点の疑いなし」と、 率直にして露骨な直言を述べている。「文明国」日本はこの分割競争に参加しようというわけだ。文明が開化すると、開化していない国を分割したり支配してし まうこととなる。事実日本は二十世紀になると朝鮮を植民地にし、中国に武力侵略した。まことに文明的でないではないか。米ソの冷戦がおわった後に、一時 「文明の衝突」(サミュエル・ハンチントン)などというあやしい議論が注目を集めたこともあった。

こうしてみるといったい文明はあったのかなかったのか、文明とは単一のものなのか何種類も存在するものなのか、文明化することはよいことなのか悪いことなのかさっぱりわからなくなる。

そんなことを考えて中国を歩いていると、よくレストランなどに「先進文明単位」と書かれた赤い旗がかざってあったり、「文明市民」になりましょうというよ うなスローガンを見かけたりすることがある。だがこれは今の中国が文明国になったということなのか、それとも文明途上国である証拠なのか、よく考えるとこ れもわからなくなってくる。もっとも今の中国の人びとが「文明」をめざしていることだけは確かなようだが。

九月に訪ねた遼寧省撫順市、そのあるビルのトイレに入ったら、目の前に「向前一小歩、文明一大歩(一歩前へ出れば、文明への大きな一歩)」とあった。なる ほど中国人の言う文明とはこういうことなのか。わかりやすい。弱肉強食の文明ではなく、身近なこのような文明を身につけたいものだ。

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