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第21回:サイゴ

芥川龍之介が中国を旅行したのは、中国共産党の結党された1921年のことである。「上海游記」のなかで、芥川は怪しい上海についていろいろ書いている (『上海游記・江南游記』講談社文芸文庫)。そのなかに野雉(イエチイ)とよばれた上海の売春婦のことを伝えている。

その様子を「日本人なぞの姿を見ると、『アナタ、アナタ』と云いながら、一度に周囲へ集まって来ます。『アナタ』の他にもこう云う連中は、『サイゴ、サイゴ』と云う事を云います」と書いている。この「サイゴ」とはどんな意味だろうか。

最後でも最高でもないのである。芥川によると、「これは日本の軍人たちが、日露戦争に出征中、支那の女をつかまえては、近所の高梁の畑か何かへ、『さあ行 こう』と云ったのが、濫觴だろうと云う事」だそうだ。芥川がこう書いたのは、日露戦争から15年ほどあとのことだ。この日本語はその間に上海まで知れわ たったということだろうか。

「語源を聞けば落語のようですが、何にせよ我々日本人には、余り名誉のある話ではなさそうです」と芥川は感想を述べている。私は中国で「サイゴ」という言 葉を耳にしたことはないが、「バカヤロ」などはたびたび聞いたことがある。どちらにしても名誉のある話ではない。

今年はその日露戦争が終わって百年、そして敗戦六十年である。(井上久士)

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