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第10回:中国の日本料理

料理に関して、中国人はたいへんな愛国主義者であると思う。世界中どこの都市に行ってもチャイニーズ・レストランはたいていある。彼らが自分の料理文化と味覚に自信と誇りをもっている所以といえよう。言葉を換えれば、保守的でもある。

というわけで、中国の外国料理は日本と比べると貧弱であるが、それ故、保守的な私は中国に敬意をはらっていた。しかし、開放政策によってマクドナルドとか ケンタッキーとかスターバックスなんていうアメリカ文化帝国主義がおしよせてきて、あっというまに中国の都市生活のなかにとけ込んでしまった。まことにな げかわしいかぎりである。これを見ると中国人は保守的だが、けっこう新しもの好きであることがわかる。私も矛盾した人間なので、こうした店をよく利用させ てもらうという次第だ。

日本料理店も以前と比べると増えてきた。もちろん高級ホテルには日本人の経営する日本料理屋がかなり前からあった。こういうところは、日本と味がそれほど 変わらないけれど、値段も変わらないので中国の物価水準からみればひどく高い。まあバブル紳士は別にして、自分のかねで行く中国人は、ほとんどいない。

もう少し庶民的な店もある。日本に留学して帰国した中国人が、居酒屋とか寿司屋とかラーメン屋でのアルバイト経験をいかして、北京や上海はじめ中国の都市 で店を出すことも珍しいことではなくなった。こういう店で日本の味を見つけると、急に私も日本民族主義者になってしまいおそろしい。8月、南京の「虎ちゃ ん」という店で、メニューのなかに冷やしトマトがあって感激した。中国人は、トマトをこういう風には普通食べないのである。ついでに南京の日本料理屋をも う一軒、ご紹介申し上げよう。「大林」という名前の店で(斯大林=スターリンではない!)、日本酒の銘柄も豊富でなかなかよろしい。茶そばとか焼きおにぎ りなんていうのもある。となりのスナックも気さくで楽しい。

中国の日本料理は、中国化されていて本当の日本料理とは似て非なるものであるとか、従業員の和服の着かたが変であるとか、いろいろ言う人がいるが、日本の 中国料理もずいぶん日本化されている。その点ではフィフティ・フィフティなのだ。料理のうえでは愛国主義も国際主義も大いに結構である。(井上久士)

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