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第3回:潘家園

北京に潘家園というところがある。旅行ガイドブックにあまり出ていないので、知っている人は少ないかと思う。ここは骨董品と古書の自由市場のような場所 だ。誰でも勝手にものを持ち込んで商売してもよいわけではなく、登録してある人だけが商売しているようだ。週末だけやっている。骨董は土曜日もやっている ようだが、古書は日曜だけである。おそらくここでものを売っている人たちは、平日は他の仕事をしているのだろう。まあサイドビジネスといったところだ。

骨董コーナーは、壁のない屋根だけつけた体育館のようなところに、それぞれが持ちよった品々を並べている。モノを見る眼がない私は、それらが価値のあるも のかどうかよくわからないが、ほんとんどはがらくたかニセモノのような気がする。しかし好事家にとっては、こうしたところで掘り出し物を見つけることこそ 本当の醍醐味なのだろう。というわけで、私はこの骨董コーナーへはほとんど行かない。

その横に古本通りがある。面積では骨董コーナーよりずっと狭い。小さなブースに仕切られた長屋のような建物が両側にあり、それぞれ独立した古本屋となって いる。通りの中央にも古本が地面に置かれたり、ワゴンに載せられたりして並べられている。これが中国現代史などをやっている物好きにとっては、チョー面白 い。中国の古書ばかりではない。戦後、日本人居留民が内地に引き上げた際に残していったのであろう「愛国預金通帳」とか昭和十九年ごろの個人の手紙がある かとおもえば、「ガキデカ」の載っている二十年以上前の『少年チャンピオン』があったりする。要するに何でもありなのだ。

中国の古本のなかで多いのは、文化大革命時期のものだ。おなじみの紅いビニール表紙の『毛主席語録』はもちろんのこと、いろいろな紅衛兵組織の新聞や「資 本主義の道を歩む実権派」批判の内部文献など、今となっては「つわものどもの夢の跡」みたいな本がゴロゴロある。新聞もある。当時のポスターもある。値段 はあってなきがごとし。交渉次第ということ。ほしそうな顔をすると高くなるから、つとめて興味のなさそうなふりをしてながめる。

ここで一日を過ごすのは、本好きにとって北京の最高の贅沢である。しかし、地面に落ち、人に踏まれて半分ちぎれた毛沢東の「最高指示」を目にするのは、少し悲しい。(井上久士)

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